本研究はミトコンドリアDNA (mtDNA)の塩基多型情報から伊東市と小田原市に生息するハリネズミの種を同定することを目的とした。両地域のハリネズミに加え,韓国産マンシュウハリネズミErinaceusamurensisのmtDNA D-loop領域前半450 byの塩基配列を決定し,既報のナミハリネズミE. europaeusお よびヒトイロハリネズミE.concolorの配列を加えて解析を行なった。その結果,伊東市および小田原市のハリネズミではそれぞれ1 つのハプロタイプしか認められなかった。一方,韓国産ハリネズミは4 個体で4 つのハプロタイプが認められた。このことからも現在日本に定着しているハリネズミの遺伝的多様性は低く,また,両地域の個体群が異なる導入経路を持っ可能性も示唆された。系統樹において,伊東市および小田原市のハリネズミは韓国産E.amurensisとクラスターを形成し,E. europaeusおよび E. concolorからは高いブートストラップ確率にて明確に区別された。また,伊東小田原- E.amurensis間の遺伝的差異は他の2種における種内変異レべルのI伝的差異よりも小さかった。よって伊東市および小田原市のハリネズミはE.amu r en s isであることが明らかとなった。